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東京マラソン2026のCO2排出量を“見える化”し、次の一歩へ— 走る楽しさを、未来につなぐサステナビリティ —

2026.02.19

東京マラソンの主役はランナーだけではありません。給水や誘導など大会運営を支えるボランティア、沿道で声援を送る人など、「東京がひとつになる日。」多種多様な 42.195km が始まります。
東京マラソン財団は、アスエネとともに、持続可能な大会運営の実現に向けてCO2排出量の算定・開示を、国内のマラソン大会で初めて実施します。

環境負荷を「見える化」する目的は、単なる情報公開ではありません。排出の主要因を明らかにし、“減らすための打ち手”を具体化して、主催者・参加者・関係者それぞれの行動につなげるためです。本記事では、まず「マラソン大会の排出はどこから生まれるのか」という前提を整理したうえで、東京マラソン2026の事前算定結果、世界の主要大会の開示事例、そして今後の方向性を解説します。

はじめに:表記・数値の前提
・本記事の排出量は CO2換算(t-CO2eq) として表記します。
※t-CO2eqは、CO2以外の温室効果ガスも地球温暖化係数(GWP)でCO2に換算した値です。
・本文中の数値は、読みやすさのため 四捨五入した値(整数) を用いる場合があります(図が小数表記の場合も、本文は整数で統一します)。
・他大会との比較は、算定範囲や前提条件が異なる場合があるため、参考情報として扱い、注意書きを併記します。

1. なぜ今、マラソン大会でCO2排出量の算定・開示が必要なのか

マラソン大会は会場運営だけでなく、参加者・ボランティア・観客の移動や宿泊、飲食、物品調達など多様な活動で成り立ちます。環境負荷は、主催者が直接コントロールできる範囲だけで決まるものではありません。
世界の主要大会では、CO2排出量の算定・開示を進め、削減目標や施策につなげる動きが加速しています。東京マラソンも国際水準に沿った情報開示を進め、透明性を高めながら削減アクションにつなげていきます。

2. マラソン大会の排出はどこから生まれるのか:Scope(スコープ)とは?

CO2排出量の開示では、「Scope1・Scope2・Scope3」の分類が一般的に使われます。排出の発生源がどこにあるか(自組織か、他組織を含むバリューチェーンか)を区分する考え方です。

・Scope1(直接排出):主催者が燃料を燃焼するなどして直接排出
・Scope2(間接排出):購入した電力・熱などの使用に伴う排出
・Scope3(その他の間接排出):移動・宿泊・物品調達・輸送など、幅広い活動に伴う排出

マラソン大会では、Scope1・2よりも、移動や宿泊などを含むScope3が大きくなりやすい点が特徴です。東京マラソンでは、結果をScope別×活動別の“2軸”で整理して開示します。



2025年大会を元にした事前算定の結果、大会全体のCO2排出量は26,029 t-CO2eq と算出されました。

※2025⼤会︓ランナー38,000名が参加

総排出量(Scope別)
・Scope1:1 t-CO2eq
・Scope2:3 t-CO2eq
・Scope3:26,026 t-CO2eq

ポイントは、排出の大半が会場運営だけではなく、主催者の外側に広がる活動(特にScope3)にあることです。


図2:事前算定のCO2排出量
出典:アスエネ株式会社


4.活動別の内訳:どの行動が排出につながる?

事前算定結果を活動別に分解すると、「参加者・観客・関係者の移動」が全体の88.4% を占め、削減の重点領域であることが分かりました。

・参加者・観客・関係者の移動:23,017 t-CO2eq(88.4%)
・参加者・観客・関係者の宿泊:786 t-CO2eq(2.9%)
・物品・飲食:1,736 t-CO2eq(6.7%)
・廃棄物:12 t-CO2eq(0.05%)
・会場設営:476 t-CO2eq(1.8%)
・エネルギーの使用:4 t-CO2eq(0.01%)
※排出量はすべて四捨五入

主催者側の工夫に加えて、参加者・観客・関係者の移動(距離・手段など)にも削減の余地があることが、数値として見えてきました。


5. 世界の主要マラソンはどう開示している?:東京マラソンが「世界7大メジャー」である意義

東京マラソンは「世界7大メジャーマラソン(Abbott World Marathon Majors)」の一員です。
だからこそ、CO2排出量の算定・開示は、国際水準で“どう透明に開示し、どう削減につなげるか”が問われます。
一方で大会ごとに算定範囲や前提が異なるため、比較する場合は「移動が算定範囲に含まれているか」など前提条件もあわせて確認する必要があります。
東京マラソンは、国際基準に沿った形で算定・開示を進め、“CO2排出量の削減という次のレース”へつなげていきます。



6. 参考になる開示事例:ベルリンとボストン ― なぜこの2大会を取り上げるのか

東京マラソンが目指すのは、「透明性(信頼性)」と「分かりやすさ(行動につながる)」の両立。開示の“伝わり方”が対照的な2大会から、そのヒントを読み取ることができます。

6-1. ベルリン:参加者にも伝わる「移動の見せ方」

ベルリンは、排出量の大きい「移動」について交通手段別の割合なども示し、「何が大きいのか」を理解しやすい形で提示しています。行動変容(移動手段の選択など)を促しやすい点が特徴です。




6-2. ボストン:詳細開示で透明性が高い一方、専門性が高い

ボストンは、カテゴリ別に細かく内訳を示すなど透明性が高い形で情報を提示しています。一方で、専門性が高い情報を扱うがゆえに、参加者にはより直感的に理解できる工夫を加える余地もあります。



7. 「走ること」は環境負荷の低い行動。でも“移動の選択”に大きな削減余地

東京マラソン2026では、約39,000人のランナーが42.195kmを走り、合計約164.5万kmを“人の力”だけで移動します(地球約41周分)。
もしこの距離をガソリン車などで移動していたとしたら、230t-CO2が発生します。「走る」という行為そのものは、環境負荷を最小限に抑えた移動手段でもあります。
一方で、参加のための移動手段(航空機/鉄道/車/バスなど)や距離は排出量に大きく影響します。今回の事前算定で「移動」が最大要因であることは、主催者・都市・参加者が共に取り組める領域が大きいことを意味します。


図6:走ることは環境にもやさしいアクション(移動手段ごとの排出量比較イメージ)
出典:アスエネ株式会社


みんなの一歩が、未来の42.195kmをつくる

東京マラソンの魅力は、走る人だけでなく、支える人、応援する人、街全体が一体になるところにあります。CO2排出量の算定・開示は、その一体感を未来につなぐための“新しいスタート”です。東京マラソン財団は、アスエネとともに、見える化を起点に削減アクションへつなげ、より持続可能な大会運営を目指していきます。
今回、「走ることは、健康に良いだけでなく、環境にもやさしいアクションである」こと、そして一方で、移動手段の選び方や行動を少し工夫するだけで、CO2排出量を減らせることを“見える化”しました。ランナーとして走る人、沿道で応援する人、大会を支える人。一人ひとりの選択が、より持続可能な大会をつくります。


8. 次の一歩:2026年は「基準値の確立」、2027年以降は「削減の実装」

東京マラソンでは、2026年に実データ収集を強化し、算定精度を高めて「確かな基準値(ベースライン)」を確立します。そのうえで2027年以降は、削減施策の導入や行動変容の訴求を本格化させる計画です。
さらに、移動に関する削減施策の検討や、カーボンオフセット、リサイクル・アップサイクルの強化などを段階的に進めていく予定です。加えて、算定結果だけでなく、削減施策が生み出す環境効果(定量インパクト)も継続的に公表し、透明性と改善サイクルを高めていきます。


2026は“正確に測る年”、その先は“減らす年”。見える化を具体的な改善につなげていきます。


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